邪鬼 藤原時代 文化財修理報告書 新潟県指定文化財

真言宗 豊山派 醫王山 遍照院 寛益寺    新潟県長岡市逆谷

    栃の木材  一木作り   約40cm      
 概要と像の状態
○虫菌害と釘による損傷と時の経過による劣化がひどく表面は軟らかい。震災時などには本体の重みで砕ける危険があった。
○害虫はケブカシバンムシ、菌は褐色腐朽菌、これらによる害が木の強度を損なっている。
○木の中に残る釘は形をとどめず溶け込み、その釘穴と割れがある。
○漆下地が少なからず木の保護に役立っている様だ。
○深い鑿の刃跡が数箇所ある。薄刃の浅丸、刃跡の場所や方向性に一貫性はなく乱雑で荒っぽい。鑿跡は作者の心を知るひとつのてがかり。
 修理材料
○檜材・白樺材・生漆・テレピン油・杜の粉・チタン粉末・顔料・松煙・エタノール・アクリル樹脂・アセトン
 修理方法
○現状を維持の修理。劣化や欠損部分は補強修理で復元はしない。損傷のない生地表面は汚すことのない様また像の美観も損ねぬ様、必要最小限の修理です。
○接着は全て漆。
○殺虫処置は燻蒸と薬剤にて行った。
○エタノールによる殺菌の後アクリル樹脂注入(パラロイド溶液役10%を2回から4回)あふれた樹脂は残さずふき取る。
○虫穴は埋め木、欠損部分は極力埋め木とするが場所や形によっては漆木屎を使用。
○埋木準備と表面補強のため樹脂が乾くと虫穴に生漆または錆漆を溢れないように充填、溢れたならば完全にふき取る。
○漆の乾燥後欠損部分や割れ部分の埋め木をした、虫穴も穴のサイズに合わせ木栓を詰め込むがたたき込むことが多い。 
○虫穴木栓の切断後、隙間には漆木屎を埋め表面を整え仕上げ古色彩色をした。 今回は色漆を使用した。
○邪鬼の下に置いた下駄はがたつきを防ぐため。
○エタノールとアセトンによるひび割れが発生したので埋め木と錆漆で補修。
○左足下駄の臍穴は本体のがたつきをなくすため添え木をした。
材の調査(本体主要部分・害虫調査)
奈良県森林技術センター
お寺様への仏像拝観時には、お心ずかいよろしくお願いいたします。  伊谷

修理前
拡大写真あり

埋木途中
拡大写真あり

修理完了
拡大写真あり

修理前

修理前

埋木完了

修理完了

埋木完了

修理完了

茶褐色の部分は漆下地。(黒に近い色)
 左目のきわに鑿跡がある。

埋木完了

修理完了

修理前

埋木途中。 左耳

埋木途中

埋木完了。左耳アップ

修理完了

修理前 左耳下、頬。

埋木完了

修理前

埋木完了

修理完了

弓形の割れは鑿の刃跡鑿の刃跡は作者の心を知る手がかり

埋木完了

修理前 左足付け根(お尻)。

埋木完了

修理完了

修理前 左手部分、上方向より撮影。
釘跡と割れ

埋木途中

釘を打ち付けたための割れ。

埋木途中。埋める箇所の内部が歪んでいるので差し込む木を二枚に分けた。
埋める板と割れ内部側面接着面が完全に噛み合わなければ埋め木をする意味がない。墨やカーボンを使い、すり合わせをした。

埋木途中

表面処理の埋め木ではなく補強のため奥底まで埋め込む

 一度のすり合わせで0.3ミリ〜0.5ミリ入る

修理完了

修理前

埋木途中

がたつき止めの下駄は臍での固定はなし。

修理前
右手。
釘跡から先がない。
特に傷みがひどい箇所

修理完了

添え木完了 

埋木途中

鑿の刃跡、
複雑な曲面によって刃跡が歪んで見えるが美しい放物線の刃跡である。
鑿の刃は薄刃、浅丸、幅一寸二分、刃跡の深さ3ミリ以上、制作当初は深さ5ミリ以上はあったと思う。
よく切れる刃である。

修理完了

修理前 後.腹部、
虫穴は柾目に多くある


埋木完了

修理完了